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これがレースだ 〜セントラル・ラジチャレ最終戦〜


セントラルサーキットの前の駐車場に着いたのは6時20分ごろ。7時からの入場を待つクルマの列はまだ1列でした。

しかし,前日までの晴天がウソのように山の中のサーキットは晩秋の冷たい雨にしっとりと包まれています。また雨か...どんより暗い空を見上げため息を一つ。


思えば7月のセントラル,ラジチャレ第2戦以降ずっと,走りに行くたびに雨に降られてます。

雨が降って自分に有利な展開になったこともありますが,前回はスピンした他クラスのクルマに撃墜されましたし,走ってても胃が痛くなるような緊張を強いられるし,それに荷物びしょぬれにはなりたくないし,やっぱりできれば雨はカンベンして欲しい。


セントラルサーキット・パドックから


絶対誰か雨男がおるな。誰や,誰が雨男や。

責任者出て来ーい!




...その時,ふと気がついた。



あ,あれ? 私っすか? 私が雨男っすか?(笑)。


...いや別にこれまでは雨男属性はなかったはずなんだけどなあ...何らかの原因で雨男になってしまった,とか?

そういうことでみなさん,すいません。私が雨降らしました,っぽいです(笑)。


ま,それはともかく。


セントラル・ラジアルチャレンジ2013も第4戦ですよ。

5月の開幕戦に始まって,7月の第2戦,9月の第3戦と真面目に参戦してきましたが,この第4戦がとうとうシリーズ最終戦です。


これまで優勝1回,3位1回,リタイヤ1回(笑)と全然大した成績ではありませんが,それでも一応今のところストリートコンパクトクラスのシリーズポイントはおとーさんがトップ。そう,実はシリーズリーダーなのよ,この不惑おとーさんが。

しかし,優勝した第2戦はリタイヤが出て決勝台数が少なかったため総獲得ポイントが低く,まだまだ本日の参加者の顔ぶれによっては逆転もあり得るビミョーなポイント差。


シリーズチャンピオンには表彰だけでなく,何と冠スポンサーであるクムホタイヤさんからV700を1台分という太っ腹なプレゼントがある。ちょうど今使っているV700がずるずるになってきてるので,ぜひともこれをゲットしたいところ。

しかも,長い間モータースポーツをやってきて表彰台のテッペンには何回か乗ってるけど,どうもこれまで「シリーズチャンピオン」というものに縁がなかったおとーさん。

開幕戦で優勝して今年は行けるぞっていうところでクラッシュ→廃車とか,子供のお受験とか,独立開業とか,いつも良いところで,これからってところで,何らかの理由で活動休止を余儀なくされてきた。今度こそ,今度こそ積年の憧れであるシリーズチャンピオンの座をものにするチャンス。


・・・・・・

全体に参加台数は少なめで,今回は自力でパドックをきちんと確保できました。

お隣はR35のGT-Rさん。とんでもない価格差の取り合わせ(笑)。GT-R1台分のお金でデミオが何台買えるのか...ええーっと...ええい面倒くさいので計算やめ(笑)。でもそのでっかいタイヤとホイール新品1台分のお値段で中古のデミオが1台買えてしまうことは間違いないな。

でもドライバーさんはイヤミなところなど微塵もないナイスガイなおにーさんで1日お隣で気持ち良く過ごさせていただきました。


お隣のパドックはR35 GT-Rさん


もう一方のお隣パドックには第2戦でもご一緒させていただいたオレンジ色のフィットさんが陣取られました。久々の再開を喜び合いながらもちらっと偵察させていただいたところ,ちゃんと山のたっぷりあるタイヤを履いて来られてます。前回の対戦ではおとーさんが勝たせてもらいましたが,今日は油断できないぞ,こりゃ。

早々に受付を済ませ,シリーズチャンピオン争いの上で重要なチェックポイントであるエントラントリストにまず目を通します。開幕戦や前戦の優勝者の方がエントリーされているとチャンピオン争いも俄然,厳しくなります。


どれどれ。

...ストリートコンパクトクラスは...ありゃ,フィットさんとおとーさんの2台だけだ。

フィットさんとおとーさんのシリーズポイント差は...エントラントリストに付属してるシリーズポイント表を見ながら計算すると,仮にフィットさんが今回優勝して,おとーさんがリタイヤでノーポイントでも逆転はなし。

あれ?...ということはこの時点で既にチャンピオン決定?

ええ〜っ,それじゃ何だかちょっとあっけなさ過ぎる。戦わずしてチャンピオン確定とは↓↓↓


いささか拍子抜けしながらも車検,ブリーフィングとスケジュールをこなします。

雨は止みません。ますますしっかり降ってます。モチベーションは上がりません。


何だかなぁ。

リタイヤでもチャンピオンもらえるなんてなぁ...走らなくてもいいじゃん。


...まあ,とりあえず事故のないように無難に走るか。
...フリー走行は義務じゃないしパスしようかな。
...またぶつけられたらイヤだしな...自分が誰かにぶつかるのも絶対にイヤだし...

それでも,まあちょっとでもウェットの練習しとこうか。
セントラルを走るのはこれが4回目。各コーナーの水の溜まり方とかグリップの変化とか,ウェットならウェットで研究すべき所はまだまだいっぱいあるし。

かなり萎え萎えの脱力モードでAMのフリー走行セッションが始まります。


しかし!


走り出して気が付いた。あれ!? コペンが1台走ってる。

いつもの赤いコペン君ではない。

でもあのコペンには見覚えがある。

真っ白のボディに黒いカーボンボンネット,ステッカーの貼り方からして素人じゃない。アクセルオフ時に響き渡るパシューンというあの音はパワーを持て余した巨大タービンの吐息。

そう,あれは開幕戦でおとーさんを2秒ちぎって1分38秒台で周回していた「編集長さん」のコペンだ。


強敵キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!


そう,このラジチャレシリーズは参加台数に余裕があれば当日参加もOKなのね。エントラントリストに載ってない強敵が当日になってひょっこりエントリーしてたことはこれまでにもあった。


編集長さんのシリーズポイントは...って走行中に分かるわけもない。でも開幕戦で2位に入っておられたし,開幕戦は台数が多かったのでポイントも高かった。総ポイントはおとーさんとそんなに大きな差はないはず。ということは,少なくともこの時点でおとーさんの「リタイヤでもイージーにチャンピオン決定」はなくなった。

というか,ひょっとすると3台中3位では危ない? 少なくも2位には入らないとヤバイ?(汗)


そんなことを考えながら走ってたから,ってわけではないですが,いつもはウェット路面に苦手意識はないはずのおとーさんなのに,随所で水膜に足をすくわれます。

おりからすぐ後にオレンジフィットさんが迫ってきます。おとーさんがかなり手前からブレーキングしてるのに彼はブレーキに余裕があるようで,コーナーの入り口ごとにバックミラーがオレンジ色一色になります。


マズイよ。何かマズイ展開になってきたよ...風雲急を告げてきたよ...

じっとり脂汗をかきながら峠区間を抜け,立体交差下をくぐり,最終コーナーに向けてブレーキングをした途端,つつつーっとデミ助は真っ直ぐに滑走を始めます。

うわ〜っ!!!

心の中で叫びながらもブレーキをリリースしたり踏み込んだり,ステアをいっぱいに切ったり戻したり,何とかフロントタイヤのグリップを取り戻すべく悪戦苦闘しますが,フロントタイヤはおとーさんの言うことを全く無視したままひたすら真っ直ぐ滑って行きます。

ダメだ。コースアウトしよう。こうなったら無理に逆らわずステアを進行方向に合わせて真っ直ぐグラベルに入るしかありません。


どっしゃぁ〜〜!ざざざぁ〜〜!!

幸い車速が低かったためグラベルに入ったところですぐにクルマは停まりました。

クラッチは切ってますのでエンジンは生きてます。すぐに脱出を試みますが...ダメ。完全にスタックしてます。先月の岡山国際に続いて2度目のグラベル埋没です(泣)。


エンジンを切って,キーは車内に置いたまま,素早くクルマを下りて砂利の中を走り,ガードレールの外に退避します。もちろんセオリー通りメットもグローブもつけたままです。

何気にもうスタック慣れしてる自分が切ない。おバカだなあ(泣)。


コース脇からライバルの編集長さんやオレンジフィットさんが順調に周回を重ねているのを悲しく眺めます。雨が止んだのだけが不幸中の幸い。

結局,フリー走行開始後間もなく最終コーナーで黄旗を出し,そのままフリー走行終了までずっと黄旗を出したままになってしまいました。Bグループのみなさま,まことに申し訳ありませんでした。


・・・・・・

フリー走行が終わってからやっとオフィシャルさんのクルマが引っ張りに来てくれて,何とかグラベルベッドを抜け出します。

幸いオイルラインもクーラント経路も無事。バンパーも,下の方は擦ってますが大きな変形や破損はありません。

ただし今回も車体のあちこちに砂利を食ってしまったみたい。走るとパラパラジャラジャラ音がします。駐車場の端ーっこの方に行って砂利を振り落とそうとしますがなかなか落ち切りません。結局パドックに戻ってジャッキアップしてお掃除お掃除。


メンバーの中まで泥だらけ(汗)


タイヤを外して驚いた。右フロントのアームのところなんて砂利だけでなく泥だらけで田んぼ状態。アームやメンバーの隙間に粘土状の泥がびっちり詰まってます。仕方なく下にビニールを引いて素手でお掃除しましたよ(泣)。何でこんなところに来て泥こねてるんだか...ダートラみたい...


この後も雨は降ったり止んだりで路面は終始ウェット。

フリー走行のコースアウトですっかりビビリが入ってしまったのか,予選セッションでもおとーさんの走りは冴えません。

先月の岡国からフロントのアライメントを大きく変えたことがタイヤの接地性に影響しているようで,ウェット時にはフロントのブレーキングが極端にピーキーになってしまい,ちょっと深めにブレーキを踏むと容易にフロントがロックしてお手上げ状態になってしまいます。

今回履いてきたR1Rは普段から通勤にも使ってるタイヤで,山は半分ほど残ってるものの1年間サーキットを何度も走って熱を入れているためコンパウンドはボロボロ,ブロックもところどころ飛んで欠けてます。まだ走れると思って履いてきましたがこいつもちょっとこのヘビーウェットの中ではまずかったか。

とにかくコースのあちこちでひどいフロントロック状態になってしまうため,まともに走れたもんじゃありません。タイムアタックなんてとんでもない。コース上に留まるのがやっと。

途中で赤旗が出たのでいったんパドックに戻ってラップタイムを確認しますが...遅い! フィットさんにはかろうじて勝っているものの,編集長さんには5秒以上離されてる。全く勝負になってない。

まずい...これでは起死回生の作戦すら考えつかない。勝てない...どうやっても勝てない...


でもその時にふと気がついた。

編集長さんのコペンの登場でテンパってましたが,まあ落ち着け。

別に優勝しなくても,1位じゃなくても,ポイント差からいってシリーズチャンピオンは取れるはずだ。
3位だとちょっと不安だけど2位ならば十分。
2位でいいんだ。


「やる以上,必ず優勝を目指せ。2位とか3位を狙ってるようではダメだ。」

モータースポーツに限らず,競技スポーツではよく耳にする言葉です。

確かにおっしゃる通りですし,おとーさんはこれまでいつも「勝ち」を意識して走ってきました。でも,明らかにクルマの状態が路面に合ってない今,無理をしてコースアウト→リタイヤとか,他のクルマにぶつけてしまうとか,こんなのは絶対に避けるべき。とすれば今回は優勝なんて狙ってる場合じゃない。


狙うのは「2位」。


狙うのはここでの優勝じゃない。あくまでシリーズチャンピオンだ。

編集長さんのコペンはもう追わない。フィットさんを抑えて,何とか2位を死守するんだ。

そう心に決めて,セッティングを大幅に変え,予選セッションの残りに出て行きます。タイムは捨て,ウェットでのコントロール性に賭けたセッティングです。


・・・・・・

セッティング変更が効を奏し,ブレーキング時のロックは若干マシになりました。ただ雨脚が強まり,もうタイムは伸びません。早めにパドックに戻り,フィットさんのタイムを見守ります。


驚くべきことにフィットさんは,このヘビーウェットの中でタイムを伸ばしてます。おとーさんと比べてクルマの状態がウェットによく合ってるようです。

ハラハラしながらピットモニターを見上げていましたが,何とかおとーさんのベストタイムは追い抜かれることはなく,予選セッションが終了しました。しかしヘビーウェットの中では彼の方が明らかに速い。危なかったぁ...


決勝グリッドはおとーさんが19番,間に1台入ってフィットさんが21番グリッド。ご存知の通りグリッドはストレートのイン側,アウト側に交互に並ぶので,2台後ということはちょうどおとーさんの真後です。こちらの動きをじっくり見られてしまうマズい位置ですなあ。

フィットさんは予選の最後辺り,ヘビーウェットの中でどんどんタイムを上げていた。一方でおとーさんは雨脚が強くなるほどタイムは落ちていて,フィットさんのタイムより1-2秒遅い周回もあった。おそらく決勝はかなり厳しいレースになるでしょう。

因みに編集長さんのコペンは14番グリッドとだいぶ差をつけられてしまいました。まあでも,これはもう仕方ない。

調子の悪い時には悪い時なりの最善を尽くす。「最速」や「優勝」にこだわらず,シリーズポイントを計算して賢く走る。そう今回は2位キープ狙い。

「守る」なら全力で,守るべきものを「守る」。これもレースでしょう?


そして決勝レースを前に雨はどんどん本降りになり,路面には川が流れている状態に。雨雲レーダーなどを見ても当分雨は止みそうにありません。大粒の雨がざーざー降る中,Aグループの決勝レースが始まりました。


セントラル・ラジチャレ決勝スタート風景
※Aグループの決勝スタート風景・・・どしゃ降りの雨です(汗)

しかしヘビーウェットのコンディションの中,やはりクラッシュが出たようでレースは途中で赤旗中断。中断時のレースの順位にそってもう一度隊列を整えた後で再スタート。

この難しい展開の中,結局Aグループのレースは,お隣のパドックのGT-Rさんが見事に優勝されました。おめでとうございます! パチパチパチ。


さあ,次はいよいよおとーさん達Bグループの決勝レースです。

パドックに一列に並びます。グリッドが最後尾近くなので後の方に並んで,ゆっくりコースイン。


Aグループのレースの後半から雨は少し小降りになりましたが,それでも路面はヘビーウェット。ちょうど予選終了時と同じぐらいのウェット具合。このコンディションだと後のフィットさんの方が約1秒速いことは予選セッションで分かってる。

これは...この路面だとフィットさんとバトルになるのは必至だなあ。


シリーズチャンピオンを取るためには2位キープが必要,そしてそのためには何とか彼に勝たないといけない。彼を抑えきらないといけない。

しかしクルマの状態は良くない。ブレーキはピーキーでいつロックするか分からない。いつもよりかなり手前で探り探り踏み始めないといけない。

周りのシビックやロードスターも,いつスピンするか分からない。でもいつも以上に他クラスとはタイム差があるので先を譲らないといけない場面がいっぱい出てくる。

そして何よりも自分が他のクルマに迷惑をかけることは絶対に避けなければならない。ブレーキをまたロックさせて前のクルマのお尻にドカン!なんてことは絶対にダメ。

どうする...どうする...どうすればフィットさんを抑えきれる?

フォーメーションラップの間も必死で頭を働かせます。


路面はヘビーウェット,周りにいっぱいクルマがいて,ブレーキがいつロックするか分からなくって,その上で1秒速い後のクルマを10周もブロックし続ける...これはおそらく無理でしょう。

バックミラーとにらめっこしながら走ってるうちにブレーキをロックさせてコースアウト→リタイヤとか,他クラスのクルマに接触→スピン→コースアウト→リタイヤ,なんていう最悪のシナリオが頭をかすめます。


それなら無理にブロックせずにライバルを前に行かせ,後から自分がプッシュしていって相手のミスを誘い,レース終盤で相手をかわして前に立ち,焦ってバタバタする相手を抑えてそのまま逃げ切る。この方が現実的です。

レースは別に全ラップ相手より前を走る必要はない。スタートからずっと後を走ってても,最後の最後,チェッカー時に1cmでも2cmでも自分が前にいればいい。

しかも自分が後にいる方が前も後もよく見えます。自分がクラッシュするのも,他車のクラッシュに巻き込まれるのも,リスクが若干下がります。


もちろん,先行したライバルについて行けなければそこで終了。
ライバルに全く隙がなくミスをしなければそれも終了。

それでも自分が先に立って10周抑え込むよりは,この方が勝てる可能性は高いはず。

結局は「攻め」こそが最大の「守り」。こういうことなのね。

50歳を前にしてだいぶボケかけた脳みそをフル回転させ,オッサンなりの「2位キープ」へのストーリーを練り上げます。


・・・・・・

さあ,フォーメーションラップからホームストレートに帰ってきました。19番グリッドにゆっくりデミ助を止めます。

またフライングしないようにシグナルをきっちり確認(笑)。

5秒前ボードが出て,すぐにレッドシグナル...そしてグリーン!


さあ,スタート!


セントラル・ラジチャレ決勝スタート風景
※Bグループの決勝スタート風景・・・画像はラジチャレの公式サイトからいただきました


若干ホイールスピンしましたがうまくクルマが前に出てくれてスムースにスタート。目の前のシビックさんをアウト側からかわして2-3台順位を上げます。ただ編集長さんのコペンにはやはり追いつかず。「あわよくば」とすら思ってなかったけど,いずれにせよ今回は勝負にはなりません。お先にドゾーです。

何台かのクルマに抜き返されながら1コーナーに。この日は1コーナーのアウト側が特に滑りやすかったため慎重に慎重にブレーキ。ゆっくりゆっくり1-2コーナーを旋回してポジションを確認します。やはり! フィットさんはすぐ右後にいます。


バックストレートでは前のクルマが巻き上げる水煙で前がよく見えません。これがウォータースクリーンってやつですね。

4-5コーナー,峠のヘアピンなど随所で他クラスのクルマがコースアウトしたりスピンしたりしてます。自分も後を追わないように気をつけてクリアしながら前を急ぎます。まだフィットさんは仕掛けてきません。


最終コーナーをやや小回りに旋回してホームストレートに立ち上がります。

おとーさんがややイン側に寄せるのに対してフィットさんはアウト側を真っ直ぐ疾走。1コーナーに入るところで

「来るな」

と思った通り,フィットさんがブレーキを遅らせてアウトに飛び込んできました。そしてそのままおとーさんのアウト側からぐりーんと追い越して3コーナーの立ち上がりで前に出られました。おとーさんはラインを内側に押し付けられて踏めません。

うむ,ライバルながら天晴れ。

教科書通り,レイトブレーキングで入り,アウト側からのパッシング。お見事!

いや,感心してる場合じゃないか(笑)。しっかり彼の背中に貼り付いて後からプレッシャーをかけないと。


しかしすぐ後で彼を走りを見てると,明らかにブレーキングでおとーさんよりもアドバンテージがある。これじゃ1秒負けるはずだ。彼と同じブレーキングポイントではとても今日のデミ助はコーナーまでに減速しきれません。

仕方なく早い目にブレーキを踏み始めながらも,足先に全神経を集中し,自分の身体を削るようにしてブレーキング量を薄く薄く削り取り,極力旋回スピードを落とさないようにします。

胃が痛くなるような緊張感。でもこうしないと彼について行けない。もう本当に必死。

ちょっとでもブレーキングがラフになるとデミ助は前方にすっ飛んで行きます。とにかく毎回のコーナーの進入で細心の注意を払う必要があります。


間に他クラスのクルマが何回か入りますが,焦らないように自分に言い聞かせます。極力大きく道を開けて,ラクに追い越せるようにします。この辺り,前回の第3戦の苦い経験が生きてます。他車のトラブルに巻き込まれるリスクも極力減らさないといけません。

4周,5周とラップを重ねます。何とかフィットさんから大きく離されず食いついてます。よし,よし。狙い通りだ。


セントラルのストレートを駆けるデミ助
※ストレートを駆けるデミ助の勇姿・・・画像はラジチャレの公式サイトからいただきました


フィットさんは,おとーさんがいつまでも背中に食いついているためか,ブレーキングでかなり無理を続けてます。こっちははるか手前でブレーキングを開始してるのに,キミそこまで突っ込まなくても,っていうぐらいレイトブレーキングを続けてます。

そのために彼はややオーバースピードでコーナーに入っており,コーナーの後半でアンダー気味になって,特に2コーナーと5コーナーで大きくクリップを外してます。結果的にその後の車速が伸びず,4-5コーナーの入り口や6-7コーナーでおとーさんが差を詰めることになってます。


勝負をかけるとするとこの4-5コーナーから7コーナーにかけての峠区間前半か...

しかし,安全にパスできるほどの速度差はありません。無理をしてぶつけたり,自身がスピンしてしまったら万事休す。あくまで狙いはライバルが怯んでアクセルを抜いたりアンダーを出してしまったりするミス待ちであって,強引に抜き去ることではない。ガマンガマン。


1周,1周,バックストレートから4-5コーナーにかけてフィットさんとの距離が肉薄してきます。
いよいよ追いついてきました。

そしておとーさんが仕掛けます。4-5コーナーで彼のインに飛び込んでみます。

1回目のアタックはデミ助のリアが流れ,立て直すために若干減速してしまって失敗。


でもその次の周回,もう一度同じ場所でインに飛び込みます。

今度は成功!

彼の懐に入り込み喉元にがっぷり食らいついたまま5コーナーを立ち上がります。6コーナーの手前で一瞬,2台が横一線に並びますが,彼の方がイン側にいるので無理をせずいったん引きます。この体制なら無理をしなくても7コーナーでもう一度インを突けます。


しかしその時,勝負はあっさり決しました。

おとーさんにぐいぐいプッシュされたフィットさんは,6コーナーの進入速度を誤り,明らかなオーバースピードでコーナーに突入。そしてコーナーを曲がり切れずずるずるとアウトに流れて行ってダートに片輪を落としました。

当然ながら彼はそこで大きく失速,その間におとーさんが脇を駆け抜けます。


狙い通りの逆転劇で2位を奪還。

さあ,後はライバルに追走の意欲を持たせない距離まで一気に逃げること。

視界の隅でフィットさんが大きなクラッシュはしていないことを確認しつつ,この日一番のスロットルで逃げます,逃げます。もちろんブレーキングだけは細心の注意を忘れないで。

この時点でもうレースは終盤の7周目。おそらくトップ勢に周回遅れにされるため9周でチェッカーを受けることになるでしょう。とすればあと2周駆け抜けるのみ。シリーズチャンピオンまであと2ラップ!


ホームストレートで何度も後を振り返りますがフィットさんは見えません。おそらくおとーさんを抜き返す気力はもう無くなったでしょう。でもまだ力を抜くのは早い。この路面ですから何が起こるか分からない。最後まで気を張って走りきりましょう。

そして予想通り8周目でトップ勢に周回遅れにされ,9周でチェッカーが確定しました。
いよいよファイナルラップ。

慎重に,慎重に。
ブレーキをロックさせないように薄ーく,柔らかーくペダルを踏み,じわーっとコーナーを回ります。

シリーズチャンピオンへのコーナーがあと4つ,あと3つ...そして最終コーナーを立ち上がってチェッカーを受けます。




ストリートコンパクトクラスの出走はたった3台。予選は2位で,決勝はその2位を守っただけ。

言葉にすると何と言うこともない実に地味なレースです。


しかしおとーさんにとっては「これこそがレース」と言えるような,非常に大きな意味を持つ,非常に多くの経験を得た,貴重な貴重なレースでした。

このヘビーなコンディションの中,クルマの状態もイマイチでコースを攻め切れず,ライバルの方が1秒速いことが分かっていて,それでもあえてライバルを先行させて後から猛プッシュを続け,レース終盤で逆転して逃げ切るという,頭で考えた通りの展開でシリーズチャンピオンを決めることができました。


セントラル・ラジチャレ表彰式
※ニヤケ顔で超・喜んでるキモイおっさん・・・画像はラジチャレの公式サイトからいただきました


こんなオッサンにスカラーシップでご支援いただいたDIXCELさま。

いつもお世話になってるファインアートさん,AZUR星人さん。

クラブ員のみなさん,みん友のみなさん,リアル友達に嫁さん子供達。

そしていつもこの拙いサイトを見に来て下さっているみなさん。


本当にありがとうございました。

長い間モータースポーツをやってて,初めて「チャンピオン」になることができました。
これはホントみなさんのおかげです。おっさんは嬉しいです。超・嬉しいです。


ありがとうございました!



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