home > diary menu > 2010年 > 3月12日

氷雨の中の彷徨 〜2010年地区戦開幕戦〜


さあ,いよいよ2010年シーズンの開幕です。

3月7日の日曜日,冷たい冷たい雨の中,名阪スポーツランドCコースにてJAF近畿地区戦/JMRC近畿チャンピオンシリーズの開幕戦が開かれました。


この名阪Cコースでの開幕戦は久しぶりです。

昨年のミドルの開幕戦は鈴鹿南でしたし,その前の年は公式戦に出られませんでした。
そのまた前の年の開幕戦は姫路でした。

3月の開幕戦を名阪で走るのは2006年のシリーズ以来。
そしてこの時の開幕戦も,名阪スポーツランドにはみぞれ混じりの非常に冷たい氷雨が降っていました(→その時の参戦レポート)。

名阪スポーツランドがあるのは,ご存知,奈良県の山の中。いわゆる「山間部」です。

平地では晴れでも,ここだけ土砂降り,とか,
平地では雨でも,この辺りだけ雪,とか,

そういうことが平気で起こる魔境の地です(笑)。

だから,大阪市内なんかで「今日は冷たい雨だねえ」なんて言ってる日にゃ,名阪ではみぞれが降ってたり雪が降ってたりするわけなんですよ。

...3月7日もそんな感じで,吐く息が真っ白になり,手がかじかんで言うこと聞かなくなる,そんなまさに「氷雨」の中の大会でした。


※撮影:evosuke.さん Special thanks!です


1戦1戦を必勝の覚悟で走る。
決して手を抜かず,全力で勝ちに行く。

そう決意したおとーさんにとって,今シーズンのテーマは「気持ち」です。


これまで長くジムカーナを楽しんできて,たくさんの感動をもらいました。何度か優勝もさせてもらって,昨年はJAFカップにも参加させてもらいました。自分では必死こいて,一生懸命やってきたつもり。

でも振り返ってみると,いつもどこかに「言い訳」を用意してたように思うんですね。
負けた時,うまく行かなかった時の言い訳。

タイヤがダメだったから,ブレーキがダメだったから,忙しくてセッティングができてなかったから,久しぶりだったから,予算ないから,単なる趣味なんだから,楽しくやるだけだから...

人一倍どころか人二倍三倍の超・負けず嫌い野郎なんで,そういう言い訳を用意しておかないとやってられなかった,というのもあるとは思うんですが,いつもちょっとだけ気持ちが逃げてた,って言われても仕方ない。

これまで勝った時も,いつも偶然っていうか,まさか勝てると思ってなかったのに「無欲の勝利」でした...っていうパターンばっかり。「勝ち」を狙って勝ったことがない。


昨年の秋,JAFカップに出させてもらって他の地区の選手を見て,すごく驚いたのがその熱意というか競技への取り組みの姿勢。みんな「勝つぞぉ!」っていうオーラがメラメラ出てた。勝つために全力を尽くしてた。自分を振り返って,これではアカン,これでは絶対勝てん,とつくづく思いました。「気持ち」の面で全然負けてる。

もっと貪欲に,ギラギラに「勝ち」を取りに行く。

これがおとーさんの今年のテーマです。


・・・・・・

と,一人で勝手に気合は入ってたんですが(笑),いつものごとくなかなか走る前の準備が整いません。

2月の某練習会で初めてAZUR星人さんにデミ助に乗ってもらい,サイドが全然効いてないことは分かってました。「走りは良いのにもったいないね〜」って言っていただきましたし。

そのため,自分でできるシュー交換をわざわざショップに依頼して,万全の対策をとろうとしたんですが(全力で勝ちを狙うためにね),あろうことか部品の品番を(自分が)間違えて注文してしまい交換できず。間違えたシューはショップに無理を言って何とか引き取ってもらったんですが,ちょうど本番用タイヤの山がほとんどなくなってることも発覚,そこで予算が尽きてしまい,新品のシューは注文できなくなってしまいました。相変わらずアホーなことやってます。

仕方なく純正のブレーキドラムだけをディーラーに発注,自分で交換します。

しかし交換したばかりのドラムはシューとの「当たり」がついていないため全く効きません。本番前の数日間は毎日通勤の行き帰りにガコガコとサイドを引きまくって当たりをつけますが,うーん...結局効きは今一つ。

ドラムを開けてしまうとまた若干効きが落ちるので「賭け」に近いものがありましたが,金曜の深夜に思い切ってもう一度ドラムを開け,シューの自動調整機構を自分で回してドラムとシューの当たりをギリギリまで詰めます。どうもここがうまく動いてなかったっぽい。

諦めたらアカン。全力で勝ちに行くんや。絶対勝つんや!

翌・土曜日はもう本番前日ですが,仕事の行き帰りにまたサイドを引きまくり。やっとちょっと効くようになったかな...でも本当に力いっぱい引いてどうにかタイヤがロックするかどうかっていう程度。しかもサイドをひいたまま引きずって走ったりしたのでドラシャに負担がかかったらしく,これまでどうもなかった右のドラシャからかなり露骨にヤバい音が...

まあ,○木数子さんによると今年のおとーさんの運勢は「大殺界」のど真ん中でこれ以上ないぐらいのサイアク。「天は我を見放したかというぐらい,全てがうまく行かない」ってことらしい。藁にもすがる思いで他の運勢本を見ると,そこでは「天中殺」ってことになってる。も,どうしよーもない(笑)。厄年が終わったのだけが不幸中の幸い。

しかし,大殺界だろうが,天中殺だろうが,そんなモノは気にしない。
とにかく勝つために全力でやることをやるだけ。勝つんや!




そして迎えた当日の朝。

気温は5-6℃。冷たい冷たい氷のような雨が降ってます。

でも雨量は結構あり,路面はヘビーウェットであちこち水溜りだらけです。

こういう状態の名阪の路面は全くグリップしません。滑ることで有名な雨の浅間台と並んで「スケートリンク」と称されています。


※画像はJMRC近畿のサイトよりいただきました


コースはいかにも地区戦というカンジの走り応えのあるロングコース。主催のTSCOさんは凝った面白いコース設定で有名ですが,本日のコースもパイロンがそこここに立っており,オフセットスラロームあり,8の字あり,最後に270度ターンありと,かなり楽しめる設定。

でもこの雨がなあ...

冷たい雨にいささか戦意喪失しながらトボトボと30分の慣熟歩行に出ます。


今回新設のN1.5クラスで一緒に走る4人のライバルは,みな昨年ミドル戦のS1500クラスで競り合った戦友ばかりです。チャンピオンのライムM君,最終戦でぶっちぎりの速さを見せたFAのF本さん,後半戦ずっと表彰台に絡んでいたコルト乗りのとのちゃん,まだ優勝はないもののシェアなドライビングで上位を脅かすスイスポ乗りのみっちゃん。みなこういうコンディションでも確実に決めてくるドライバーばかり。相手のミスは期待できません。

とりあえず旋回部分を小さくとって,なるべく残りを直線的に踏めるようにする,特にストレート前のパイロンや島回りの部分で失速しないこと,など基本的な部分を確認。走り出してすぐのパイロンスラロームの部分では,パイロンの手前でしっかり向きを変えて,パイロンの横でフロントが脱出方向に直進しているようにラインを考えます。


さあ1本目。記念すべき2010年シーズン開幕の1本目です。

いつものように気合を入れながらスタート。ちょーっとホイールスピンが多いかな。
それでも天下のR1R,この極寒の低温ウェット路面にしっかり食いついてます。

パイロンの1本目はあえて2速で大きく進入,2本目のパイロンではサイドを引きたくなるところですが,失敗して失速しても,回り過ぎてしまってもいけないところ。左手がむずむずするのをグッと堪えて,1速で小さくぐりぐり回りこんで素早く立ち上がります。

パイロンを一つひっかけてイトウ工業コーナー(1コーナー)を回って外周に立ち上がります。さあ,しっかり踏めよー!


※撮影:evosuke.さん Special thanks!です


しかし...

外周をぐるっと回り込む90度コーナーで,ドライの時と同じように縁石をがっつり踏んだら,フロントは無事に通過したものの,リアがクルっと回ってしまい,体勢を立て直す間もなくデミ助の小さい車体はスピンモードに突入。

もうこうなったらスピンを回避すべくジタバタするよりも,ブレーキを断続的に踏んで,ちょっとでも本来の進行方向に近い向きにクルマを停めることに専念する方がいい。ヘンに悪あがきすると,車体が暴れて転倒したり,とんでもないコースアウトになってしまうことがある。

「やってもうたぁ〜 f(^-^;)」

とは思いつつも案外冷静にクラッチを切りブレーキを断続的に踏んで,クルマをいったん停めます。しかしここは狭い狭い名阪のコース上。しかもクルマが停まった向きは,本来の進行方向とちょうど90度。

...はい,バックオーライ,バックオーライ...

いったんギアをバックに入れて切り返さざるを得ませんがな(泣)。


もう1本目のタイムは勝負になりませんから,あとは2本目に向けての練習です。思いっきり突っ込んでみたり,テールを振ってみたり。

しかし要らんことしてたら,最後の270度ターンで回り過ぎ,フロントがパイロンとごっつんこ。もうしっちゃかめっちゃかです(泣)。もちろんタイムは5台中ダントツのビリ! 1位との差は何秒? 15秒? あり得ねえ(泣)。全く勝負になってない。


・・・・・・

いささか...いや,かなーり落ち込みます。

絶対に勝つ! とか意気込んで来てるのに,何よこれ。何よこの体たらく。
ダントツの最下位って,カッコ悪いにも程があるでしょ。
トップの2人はきっちり同秒の中で争ってるのに,おとーさんは完全に勝負から脱落。


お昼の慣熟歩行でも,冷たい氷雨の中を凍えながらウロウロしていると,何だか悲しいような情けないような気分になってきます。

こんな寒い寒い雨の日に,こんな山の中にやってきて,こんな狭苦しい場所を,アホみたいにクルマぶっ飛ばして,しかも1日に2回走るだけの競争してる俺たちって...バカじゃね?

何かもうどーでも良くね? こんなこと。
テキトーにやって,早く帰って,酒飲んでゲームでもしようぜ。
カゼひいたらバカみたいだし。

...あれだけ意気込んで乗り込んで来たのに,何だか「ふにゃふにゃふにゃ」と音がしそうなぐらい気持ちが萎えてきます。


しかし。

あまりの寒さに慣熟歩行を早々に切り上げて行く人もいますが,何だかおとーさん,歩き続けてます。ゴム長履いて,白い息を吐きながら歩いてます。

あっちウロウロ,こっちウロウロ,氷雨の中を彷徨っています。

おまけにふと気が着くと,お経か念仏のように,自分の一歩一歩に合わせて口の中でつぶやいてる。歩くリズムに合わせて唱えてる。

...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。
...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。


いや,別に誰かがそういって励ましてくれるわけでもない。
全く趣味の世界。自分が好きでやってること。

でも好きでやってることとはいえ,必死でやってきたよね。
時間がない中,お金がない中,家族に白い目で見られながら,必死でここまで来た。
コンパクトカーで近畿最速を争い,全国レベルの大会にも出られるようになってきた。

がんばらんかい。おっさん,もっとがんばらんかい。
1本目でスピンしてビリになって早々に挫けてる場合ちゃうぞ。
おっさん,今日は「勝ち」に来たんやろ。まだ負けが決まったんとちゃうやろ。
大事なのは「気持ち」。それがおっさんの今年のテーマなんやろ?

...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。
...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。


ウロウロ彷徨ううちに,身体が温まってきたんでしょうか。
氷雨は降り続き,吐く息は白さを増し,足元の水溜りも凍らんばかりの冷たさですが,さっきよりちょっと寒さが気にならなくなってきました。


・・・・・・

さあ,1本目の大失敗で失いかけた気合が戻って来たところで午後の2本目に入ります。

1本目の反省は...

1.縁石を踏み過ぎ。縁石で跳ねて向きを変えるような乗り方は,このコンディションではリスクが高すぎる。あえて乗りたい縁石にも乗らず,しっかり平面で向きを変える。

2.サイドは効かない。やっぱり効かない。フットブレーキをしっかり兼用して,格好つけずにきっちり確実に回そう。

3.1本目と同様,コーナーは小さく回って素早く脱出。なるべくステアを早く戻して直進部分を長めにとろう。少々ステアが忙しくなっても仕方ない。とにかくステアの戻しを素早く。

4.とにかく気持ちで負けるな。視線を前へ前へ向けて踏んでいけ。もうウェットは怖くない。1本目のスピンも全然,怖くはなかった。とにかく雨でも踏んで行こう。

...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。


さあ,気持ちがみなぎってキタ━━━(゚∀゚)━━━!ところで,2本目のスタートです。
いったん小降りになった雨が再びパラパラとルーフで音を立ててますが気にしない。

気持ちホイールスピンを抑えて静か目に走りだします。
スタートラインを出てすぐを左に折れ,最初のパイロンセクションに向かいます。

おら,行けよ〜!

自分で叫んで気合を入れます(下の車載ビデオでチェックすべし)。
もはや氷雨の中の彷徨,ではなく,咆哮だ。がお〜!

パイロンはステアをぐりぐり回して無難にクリア。
先ほどスピンした外周コーナーは,縁石を踏み過ぎないように気持ち抑えてクリア。

その後の大きい島回りも,進入でうまくリアを出すことができ,ステアは浅いままで旋回。アクセルをしっかり踏みながら外周に脱出することができ,ここでも思わず

よぉし〜!

と声が出てます(下の車載ビデオで確認ね)。


さあ,ここからの高速区間がおっさんの本領発揮。
この凍りそうなヘビーウェットの中,年甲斐もなく踏む踏む。

S字を抜け,右奥のヘアピンを抜け,パイロンのクランクを得意技の左足ブレーキで曲がりストレートに戻ってきたぁ〜。スピードが乗ってる。その証拠にコントロールラインより少し前で2速が吹け切り3速へ。

パンパカパーン! この時点では2位を1秒ぐらい引き離すダントツのトップタイム!


しかし。

ここで欲張り過ぎました。

ストレートから右に曲がってパイロンセクションに入る部分。ずーっと以前,2005年の開幕戦でもスタート直後にいきなりスピンした部分。

ここはブレーキで勝負せず,早めにブレーキングして向きを変えてから進入するべきところ。ここをドライの時と同じく思いっきりブレーキング残して突入(←大バカ)。

当然のようにアウトにざざーっと流れ始めるデミ助のお尻。

やはり来たかあぁぁぁ! 負けんぞぉぉぉ!

ステアをぐりぐり回し思いっきりカウンター,もう完全にフルカウンター。

ずさあぁぁぁ!と音を立て斜めに滑走するデミ助...しかしギリギリの土俵際で踏み止まる。

止まったぁ...でも完全に失速。大きなタイムダウン。

やはりダメか...暗い絶望感がおとーさんの心を支配しそうになります。


しかしその時。


...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。
...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。

あのお経とも念仏ともつかない奇妙な文句が脳裏によみがえります。

そうや。まだ勝負は終わってない。

諦めるな,おっさん。今日はここに「勝ち」に来たんやろ。

がんばれ,おっさん。走らんかい,おっさん。


幸い,フルカウンターのお釣りでデミ助の車体は再び大きく回転し,ちょうど目標パイロンの方向を向いている。よし! 行け! おっさん,行け!

ほとんど止まりかけたエンジンをもう一度ぶぉーんと奮い立たせ,デミ助は猛然と1本目の左ターンに突入。効かないサイドを「がつっ!」と音が出るぐらい思いっきり引きます。

アクセルを少しラフに踏んでデフで何とか回転。

すぐに次の右270度ターン。ステアを手の平でぐりぐりぐりぐり回し,再びサイドを思いっきりがつーんと引く。デミ助の車体は何とかぐるーんと旋回。

よし! まだ行ける! 諦めるな,おっさん!


コースはもう残りわずか。島からオニギリの頂点に抜けS字へ。そして最後の左270度ターン。

慎重に姿勢を作り,サイドをがつーん,スロットルをハーフから開いていく...つもりが,回転が速すぎてコントロールできず失速。しかし慌ててアクセルを踏み,何とか加速して,ゴール!



※これはドリフト競技ですかと言いたくなるようなステアさばき(笑)



おっさんは,がんばりました。

でも勝てませんでした。

やはりあのハーフスピンの失速が大きく響き,中間計測ポイントでは2位を0.8秒ちぎったトップタイムながら,最終タイムでは1位ライムM君にちょうど1秒差,2位FAのF本さんには何と0.06秒の僅差で3位という結果になりました。


・・・・・・

走り終わり,3位が確定したおとーさん,普段ならすごい悔しさがこみ上げてくるか「まあしょうがないよな」っていう言い訳モードに突入するのですが,今回は不思議な爽快感がある。

何なんだろう,この爽快感。

去年JAFカップで全国レベルの速さに全然歯が立たなかった時の,腹の底からこみ上げてくるような可笑しさとも違う。無理やりに自分を偽って作り上げた自己保全のための満足感でもない。実際に,爽快。とても爽快。このお天気とは全く裏腹な爽快感。

周囲からは「すごい悔しそうな顔してるよ」と言われたけど,自分の自覚できる範囲内では悔しさは微塵もない。だって,がんばったもん。精一杯走ったもん。


※今回もよくがんばってくれました。デミ助クン。


今回ウチのクラブでうれしい表彰台が。

96年から14年にわたりお休みの期間をはさみながらもコツコツ走り続けてきた180さん(現在はDC2乗り)が,ガチンコ勝負のN2クラスで初めて地区戦の表彰台をゲット。

おめでとうございます!

やはり,続けることが重要なんです。お休みせざるを得ない時があっても,また走る。
走り続ける。これが大事なんですね。


※おめでとうございます。次はミドル戦で表彰台のテッペンに!



どんなスポーツでもそうでしょうが,ジムカーナにはドラマがあります。人間ドラマ。
がんばった人,走り続けた人が主役のドラマです。

おとーさんは今回,主役になり損ねました。でも,諦めません。

おっさんは,がんばります。走り続けます。
また主役になる日を目指して,走り続けます。


...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。
...がんばれ,がんばれ,おっさん,がんばれ。



前のDiaryへ前のDiary | PAGE TOPへPAGE TOP | 次のDiaryへ次のDiary