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近年のジムカーナ事情

ジムカーナについて理解していただいたところで,高性能なスポーツカーではなく「お買物車で」ジムカーナを走るメリットについて,近年のジムカーナ事情を振り返りながら考えて見ましょう。


ジムカーナは元々,なるべくいろいろなクルマがイーブンな条件で走りを競うことが出来るよう,クルマの排気量や駆動方式,改造度などによってクラス分けされています。

  • 足回りと駆動系を中心にした比較的ライトチューンのインテグラ・タイプR → N2クラス
  • 足回りと駆動系を中心にした比較的ライトチューンのランエボX → N4クラス
  • 上記に加え吸排気系もチューンした峠仕様の黄色いRX-7 → SA2クラス
  • 思い切ってナンバーを切り超・軽量化した公道走行不可のランエボIX → SCクラス
  • 元々レース用の小型フォーミュラカー(もちろん公道走行不可) → Dクラス

などなど...


しかし最近この排気量,駆動方式,改造度というクラス区分の要素に,クルマの「年式」という要素が加えられるようになりました。


それは何故か?


この10年ほどでクルマに求められる性能は大きく変わり,「走り」よりも「安全性」や「低燃費」,「快適性」が重視されるようになりました。その結果,クルマは大きく・重く・遅くなり,「速さ」では新型車が旧型車に太刀打ちできなくなってきました。

そのため速さを求めるモータースポーツの世界では,一部のカテゴリー,クラスを除き,上位を占めるのはずい分前の旧型車ばかりという異常な事態となってしまいました。

古いクルマで走るのも悪くはありません。ボロボロの愛車をあちこち直しながら,労わりながら走るのもオツなものです。また,某マンガではありませんが,古いクルマで高性能な新型車をぶち抜く快感は他に代えがたいものがありますよね(笑)。

しかし旧車ばかりのワンメーク状態というのも,モータリゼーションの発展と共に歩んでいくというモータースポーツ本来の姿からはかけ離れてますよね。でもドライバーは旧型車でないと勝てないため,新しいクルマで走るという選択肢はありませんでした。また古いクルマに最新のSタイヤを履いて走るアンバランスから来るコスト負担もハンパないレベルに達しており,多くのドライバーがその重荷に喘いでいました。


※古いクルマでジムカーナを始める場合のコストと,新しいお買物車でジムカーナを始める場合の細かいコスト比較は次の「低コストでいこう!」をご覧下さい。


また「最近のクルマは重くて遅い」とはいえ,「お買物車って走るの?」に書いた通り,デミオやフィット,ヴィッツなどのコンパクトカーのスポーツグレードは乗ってみると非常に楽しいクルマに仕上がっています。クルマの基本性能はこの10年で大きく上がっていますので,クルマに乗って操る「楽しさ」は決してスポイルされてないんですね。


・・・・・・


そこで最近になって,新型車の走る場を確保するため,新型車を年式によって旧型車とクラス分けするようになりました。

それがここまでに何度か名前の出ている「S1500(スーパー1500)クラス」や「PNクラス」です。


それぞれのクラスの車両規定などは後で詳述します。
S1500クラス詳解
PN1クラス詳解


S1500(スーパー1500)クラスは2006年に中部地区のジムカーナ,ダートラで初めて設定されたクラスで,1500ccのお買物車がモータースポーツの世界で活躍するようになるきっかけを作った画期的な試みでした。

「初年度登録から7年以内*」という制限で旧車を廃し,
排気量を1500cc,車両価格を180万円までにしたことで車種をある程度限定し,
さらに,巧みな改造制限によってコストの削減と公平性を達成し,

そして何よりSタイヤを廃し普通のスポーツラジアルタイヤで走るようにしたことで,ランニングコストや車両の破損リスクを減らし,多くのドライバーをタイヤ地獄から救いました。

Sタイヤは,公道を走れる最低限の溝はありますが,スリックタイヤに近い柔らかいゴムでできており,素晴らしいグリップを持つ代わりあっという間に磨耗してしまいます。しかも1本が結構なお値段します。また超ハイグリップゆえ車体への負担も大きくなります。


このS1500クラスは数年で全国に浸透し各地区で人気クラスになりました。しかし日本ジムカーナ界の頂点である全日本シリーズにはなかなか採用されず,S1500クラスのお膝元である中部や近畿で開かれる大会の時に特設クラスとして設定されるだけの状況が続きました。


しかしリーマンショック以降長引く不況の中,様々な負担に疲れ果てコースを去っていくドライバーが相次ぎ,草モータースポーツであるジムカーナにすら衰退の色が濃くなってきました。そんな危機的な状況下で,日本のモータースポーツを統括するJAFもやっと重い腰を上げ,

「JAF登録が2006年以降」という制限で旧車を廃し,
従来の排気量や駆動方式による分かりやすいクラス分けを踏襲し,
これまで以上の厳密な改造制限によってコストの削減と公平性を目指した,

そういう車両クラスを2009年途中から全日本シリーズに設定しました。それがPNクラスです。


しかしこのPNクラスは,せっかくS1500クラスの理念を取り入れた緊急措置であったにもかかわらず,Sタイヤを制限せず,かつタイヤのサイズが純正から一切変更禁止という奇妙な車両規定になっていたおかげで,翌2010年になってもあまり人が集まりませんでした。

そのためJAFは再度動き,タイヤのサイズは純正から1サイズアップまでOK,しかも「タイヤは外周を1周する縦溝を持つこと」という規定を設けました。Sタイヤにはそのような縦溝がありませんので,これでPNクラスもやっとSタイヤではなく普通のスポーツラジアルで走るクラスということになりました。


そしてPNクラスにこの規定が適用された2011年,全日本ジムカーナをデミオやフィット,ヴィッツ,スイフトなどのお買物車が席巻しました。PNクラスの中でも1600cc以下の2輪駆動車が走る「PN1クラス」は全日本ジムカーナの様々な車両クラスの中でも最も参加台数の多い人気のクラスになりました。



MAZDAのデミオはお買物車の中でも最も人気のある競技ベース車です


もちろん古いクルマにSタイヤを履いて走り続けることもカッコいい。

でも今からモータースポーツを始めるのに高価なスポーツカーは要りません。わざわざ中古車屋さんを何軒も回って修復歴のない競技ベース車を血眼で探し回る必要もありません。ガレージの奥に使いかけのSタイヤを何セットも積み上げて奥さんに怒られることもありません。

走るのはそこらのお買物車で十分。タイヤも普通のスポーツラジアルで十分。腕さえあればそのままそれで全日本の頂点にも立てる。


さあ,お買物車で,

普通のスポーツラジアルタイヤで,
楽しくジムカーナを走ろう!


※地区により,シリーズにより,「H12年以降」や「10年以内」とされている場合があります。競技規則や車両規定は時々変更がありますので,実際の車両作成や競技参加にあたっては,必ず自分の地区のJMRCのサイトなどから当該年度の競技規則と車両規定をご確認下さい(→各地区のJMRC公式サイト一覧)。




今回のまとめ

  • 安全性や低燃費,快適性を追及するあまり近年の新型車は重く,遅くなってしまった。
  • そのため一時期モータースポーツ界は旧型車ばかりが走る事態になっていた。
  • しかし古い車に最新のSタイヤを履いて走ることでクルマはよく壊れるし,かかるコストはハンパない。長引く不況の中,競技に疲れコースを去っていくドライバーが後を絶たなかった。
  • そこに現れたのが新しいお買物車に普通のラジアルタイヤを履いて走るS1500クラス。
  • S1500クラスの活況を基にJAFが全日本ジムカーナに設定したのがPNクラス。
  • 全日本PNクラスが普通のラジアルタイヤで走る規定になった2011年,特にお買物車の走るPN1クラスが大ブレイク!
  • これからジムカーナを始めるのなら,ぜひお買物車で始めよう!



Updated on Jan 11, 2012.

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