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大人と子供 (その2)〜JAFカップ2009〜


本番の日の朝はなんと5時半にゲートオープンです。

まだパドックは真っ暗ですよ。暗闇の中で荷物を降ろし,走行準備に入ります。


※まだ真っ暗なパドック


まあ,大きな荷物は前日からパドックに置いたままにしてますから,準備といってもせいぜいゼッケンを貼り直したり,ホイールナット緩んでないか確認したりぐらいですが。本番用のタイヤも常時履きっ放しですしね(笑)。


そして中部S1500の人たちがみな「ラスボス」と呼ぶ,前日の公開練習には不参加だった,中部地区S1500チャンピオンのごま桃さんが隣のパドックに入ってこられます。いよいよラスボスのご降臨です。ご主人や子供さん達がサポートでご一緒。

このごま桃さん,本当に速いんですよ。異次元の速さ。ただのボスキャラではない「ラスボス」と呼ばれるのもうなづける。まさに キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!! って感じ?

それにしてもこんなにキュートなママさんが何故こんなに速いのか,本当に謎です。

走り方もママさんっぽく,静かでスムース,おとなしい走りに見えるのですが,以前南コースのジムカ枠でご一緒した時には,常時1秒以上チギられてました(笑)。隣にいたライムM君とおとーさんが縁石にガツガツ乗って必死で追い上げても,全く近寄ることすらできませんでした。


そうこうしてるうちに夜が白々と明けてきます。
薄い雲が広がっているものの青空はあくまで高く,気持ちの良い朝です。

しかし,今日のお天気予報は曇りのち雨。寒冷前線が通るので午後のある時点からは確実に雨が降ってくるという予報になってます。

雨の降り始めが早ければ1本目勝負になってしまう可能性もあるわけですが,雨雲レーダーによる予報では,鈴鹿での振り出しはおそらく午後3時ごろとのこと。せっかくのビッグイベントですから何とか2本ともドライで走らせて欲しいところ。


※午前中は気持の良い秋晴れ状態だったんですが...


もう一度慣熟歩行でコースを確かめ,開会式とブリーフィングがあります。

ミドル戦の時のようにみんな三々五々地べたに座るんではなく,ちゃんと大きなテントがあって,みんなパイプ椅子に座ってお話を聞きます。

中部チャンピオンのご夫婦選手さんの選手宣誓に合わせてみんなで風船を飛ばします。
数が多いのでなかなか壮観です。でもこの風船,ちゃんと環境に優しい素材で作られているとのこと。なかなか行き届いてますね。


・・・・・・

さていよいよ本番1本目の出走が近づいてきます。

しかしいざとなるとどうしても昨日のダメダメぶりが思い出されてしまって,今一つ心の中に燃え上がるものがありません。午後から雨になる可能性があるわけですから,しっかり1本目でタイムを残しておく必要があるわけですが,気持は萎え萎え。

身体の方もダルダルで,準備運動をしようとすると身体の節々がギコギコいってる。昨夜は早い目に寝たので,4時過ぎ起きとはいえ,少なくとも6時間は寝てるんですけどね...どうも頭もぼーっとしてちゃんと働いてません。

...これって,ひょっとして昨日の疲れ? ( ̄ー ̄;)


そう,これまでおとーさんには2デイイベントの経験がありません。

昨日の公開練習,初めてのビッグイベントで張り切り過ぎて何周何周もコースを慣熟で歩き,途中で全力で走ったりもしてた。クルマでの走行は2周だけだけど,普段のイベント以上に動き回ってるのでその疲れがとれてないっぽい...




じじぃ,体力なさ過ぎ... (;´д⊂)


今後,2デイイベントに出る時には,ちゃんと体力の配分を考えておかないといけません。
っつーか,もっと身体鍛えろ,じじぃ! f(^-^;)


...ということで老体に鞭うってクルマに乗り込み1本目出走の列に並びます。今一つ気持に張りがありませんが,とにかく悔いのないように,1本目で普通にタイムを残しておかないと。パドック横でAZUR星人さんがみなの走りを見守っておられます。Sオーリンズユーザーの端くれとして良いところを見せたい...と思うほど余計に緊張して力が入ってしまいます(笑)。


さて1本目のスタート。

昨日にも増してホイールスピンがひどく,クルマがちっとも前に進みません。

何とか2速に上げて短いホームストレートを突っ切り,左の広場に入って1発目のターン...突っ込み過ぎでフロントが逃げ,きれいに回りません。仕方なくぐりぐりステアを切って回り込み,2本目の右ターンは無難に回って1コーナー方向に抜け,広場を後にします。

さて昨日からずっとうまくいってない2コーナー後のシケインパイロンですが,朝の1本目はとりあえず2速で大きく回りこんで行くことにしました。

2コーナーの縁石には近寄らずアウトにはらんで...ごるぁ!はらみ過ぎじゃ〜!

しかもそのわりに1本目のパイロンへの進入角度が浅く,結局パイロン間をうまく抜けられず,2本目のパイロンを大きくかわすようなラインになってしまいスロットルを踏めず。
あ〜あ,大失敗ですがな。


気を取り直してストレートを走り抜け,3-4複合コーナーに...ここには昨日の公開練習ではなかったライン外しのパイロンが1本設定されてます。これを大きくアウトから回りこんでクリアしようとしますが,コースのアウト側のグリップは悪く,コーナーを回り込んで行くにしたがって徐々にアンダーになってきます。これをステアを切り足しながら何とかクリア。

S字は,これも昨日のコースにはなかった出口のシケインパイロンを意識して,いつもより若干奥にクリップを取るように走りますが...それでもシケイン1本目の入りの角度が浅く,2本目で詰まってステアで脱出...あ〜あ,ここも失敗。


S字の出口で失敗してるのでアドバンコーナーにはノーブレーキで突っ込めるぐらいの車速しか出てない。それなのに,ついいつものコース走行の感覚でブレーキしてしまいさらに失速。アドバンの出口ではコース外側が全く余ってます。

ここで初めてあまりにも車速が出てないことに気がつき焦って奥のヘアピンは突っ込み過ぎ。若干アンダーになりながら脱出して,さあいよいよ最後のシケインスラローム。

とりあえず走行1本目は2速で入ってみようと決めていたので,2速のままでぬぼーっとパイロンの間に入って行きますが,2本目のパイロンをクリアしたところで初めて,明らかに作戦ミスだったことに気がつきます(汗)。

後のパイロンは,完全に失速した状態で右に左にぐりぐりステアを回して無理やりクリア。

シーズン中でもちょっと珍しいぐらいのダメダメ走りで,脱輪やPTのペナルティがついた中部のお二人を除けば,1本目はダントツの最下位タイムで終了です。何とトップのピヨピヨヴィッツさんとの差は5秒! 別にパイロンに触ったわけでも脱輪したわけでもないのに!

よりによってAZUR星人様の目の前でこの走り...カッコ悪う (;´д⊂)。



※ダッサダサの1本目...ラインの悪さは天下一品(泣)



2コーナー後のシケイン,S字後のシケイン,そして最後のシケインスラローム...大失敗した3ヵ所でそれぞれ約1秒はロスってると思われるが,それでもトップまであと2秒も差がある。


目の前に見えない壁が...分厚い壁が立ちふさがっている気分です。
叩こうが,蹴ろうが,引っかこうが,どうにもビクともしない頑丈な壁。
昨日の公開練習でもこの壁を感じましたが,今日は一段と壁がデカくなった感じ。


近畿のミドル戦ではぼちぼち優勝もできるようになったおとーさんでしたが,これは例えればあくまで高校野球の地区予選の話。大人のプロ野球のレベルまでにはまだまだ,まだまだ,大〜きな壁があったようです。

ちょっとは成長したと思っていた自分が,実はまだまだお子ちゃまレベルであるという,こういう現実に直面するのはあんまり愉快なことではありません。さすがのおとーさんもいささか挫けました。まあ勝てるとは思ってなかったけど,ここまで差があったのか...


しかし観覧席に上がって他のクラスの走りを見ているとだんだん考え方が変わってきます。
全日本のトップの選手に,地区戦の決してトップではない選手も果敢に挑んでいる。

そうよね。

子供は,これから大人になる。
子供は成長する。

プロ野球選手だって,最初はみな高校球児だったんだ。
その中から努力して這い上がったヤツがプロになってるんだ。

壁は高ければ高いほど,分厚ければ分厚いほど,乗り越えた時,気持いいもんな。
たしかミスチルの歌にもそういうフレーズがあった。

そうだ。

やってやろうじゃん。

何年後になるか分からんけど,必ずこの壁を越えてやろう。
必ずこの分厚い壁を越えて全国レベルの選手になってやろうじゃん。

ブレーキングも,スロットルワークも,ステアリングさばきも,サイドターンも,もっともっと上手くなってやる。

こういう狭い間隔のパイロンを,もっともっと走りこもう。
もっといろんなコース設定を経験しよう。
そしてパイロン1本について,もっともっとよく考えるようにしよう。

クルマのセッティングももっと勉強しよう。タイヤのマネージメントももっときちんとやろう。
もっといろんな経験をして行こう。

...何だかそんな気持になってきました。

勝ち目はない。とても歯が立たない。それは分かってるけど,もう一度今の自分のベストの走りでこの壁にぶち当たろう。それでもってこの壁の固さと厚みをもっと正確に評価しよう。

2本目に向けて,やっとこさ,メラメラと気持が燃え上がってきます。


・・・・・・

幸い,空に薄く雲がかかってはきたものの,まだお天気はもってます。

オーガナイザーやオフィシャルのみなさんも,懸命に時間を節約して,雨が降り出す前にできるだけ競技を進めてしまえるよう努力されています。

おかげさまで,まだ完全に晴れの状態で2本目の走行順が回ってきました。


とにかく1本目,2速で突っ込んで失敗した部分をきっちり1速に落として立ち上がること。シケイン状のパイロンは2本目に照準を合わせ,手前でしっかり姿勢を作って進入すること...何度も頭の中で走行イメージを作りながら列に並びます。


さあ,やっと気合が入ってきました。

この2日間にわたるビッグイベントも,この2本目の走行で終わりです。
とにかく力いっぱい壁にぶち当たろう。そしてクオークが飛び散るように玉砕してみよう。
それで,壁の固さも厚みも分かるだろう。


走り出しはやはりフロントが路面を擦ってます。全然前に進みません。おそらくここだけでライバルにコンマ2-3秒は負けてるだろうと思いながらシフトを2速にぶち込みます。来季に向けて,まず最初にこのタイヤをどうにかしないといけないようです。

広場への進入はまあまあです。1つ目のターンもだいたい狙った通りに回ります。

しかし,2本目のターンに向けてうっかりステアリングを増し切りしてしまい,2本目のターンは痛恨のオーバーターン。角度にして45度ぐらい回り過ぎてしまって,あわてて出口のパイロンからステアで逃げますがスロットルを緩めざるを得ませんでした。

ここは右ターンから立ち上がってそのままGで残った状態で回れる上,パイロンの先が下り坂になっているので,ステアの切り過ぎには注意が必要だったんですが,「回れないかも」という不安からついステアをいっぱいまで切ってしまったんですね...


しかし落ち込んでるヒマはない。次にこのコース最大のキモ,2コーナー後のシケインパイロンが待ち構えてる。1本目は2速で行くため「アウトにアウトに」意識し過ぎてかえってラインを見失ってしまった。今度は1速に落とす分,もう少しインから入ってもいいはず...

と思ったら,今度は1本目のパイロンに真っ直ぐ入り杉〜で,万事休す (;´д⊂)

観戦に来られていたますぞーさんがこの決定的瞬間をカメラに捉えて下さってました。


※撮影:ますぞーさん Special Thanksです!


ご覧の通り1本目のパイロンを半車身行き過ぎてるのに,まだクルマのフロントがあさっての方向を向いてます。舵をいっぱいに切ってて,ここから2本目のパイロンを何とかかわして立ち上がろうとしてますが,ここでこんなことやってるようじゃ絶対に素早い立ち上がりは無理です。

あ〜,やってもうた〜 と思いつつも必死でスロットルを踏み込みストレートを駆け抜けます。

そして4コーナー外側のパイロンを無難に回り,お次がS字です。ここは先ほど出口のパイロンを気にし過ぎてかえってラインを外してしまった部分。作戦を変えて通常と同じラインで走り,シケインの入り口のみ大きくアウトに出ます。

1本目ほどは失速せずにアドバンコーナーに飛び込みます。ここも1本目より車速が出ていて出口でアウトまで寄せられました。

ヘアピンは無難にこなし,いよいよ最後のシケインスラローム。ここは最初から1速に落としてきっちりラインをトレースします。

そしてスラロームの後半は2速に上げてゴール!


※撮影:evosuke.さん Special Thanksです!



減速しながら窓を開けます。
タイムは? 順位は?

コース前半で2ヶ所ミスをしてますが,その後は無難にまとめました。近畿ミドルなら何とか3位でスーパーラップに進めるかな,という走りです。おとーさんとして決して満点の走りではありませんが,まあこんなモンです。いつものミドル戦でもたいてい1-2ヶ所はミスしてますからね。


1分14秒123...現在7番手のタイムだ〜

いつも全日本のビデオで聞き慣れたAアナの声でおとーさんのタイムが読み上げられます。

7番手...7番手ですか...

残り2人は中部チャンピオンのごま桃さんと近畿チャンプのライムM君です。当然ながらおとーさんは最終的に9位に沈むことになります。



ふ,ふふ,ふふふふ... (´ε` )

ヘルメットを脱ぐ間もなく,突然笑い出すおとーさん。
別に頭がおかしくなったわけではありません。唐突に腹の底から可笑しさがこみ上げてきたんです。ふ,ふふふ,ははは,わはは,わははははは!


壁,分厚いです。
すごい分厚いです。

現時点では全く歯が立ちません。

今の走りはダサダサだけど近畿ミドルなら何とか3位に入るぐらいの走りはしたつもり。それが7位,いやもう9位に落ちました。10台中の9位,べべつーです。

やっぱりダメです。大人と子供です。玉砕です。
どうがんばってもかないません。乾杯,いや完敗!


でもね,それが何かとてつもなく可笑しい。
とてつもなく楽しい気分になる。

この壁を越えちゃる。
いつか絶対越えちゃる。

今は全然歯が立たないけど,いつか絶対越えちゃる(笑)。


人間の心理は複雑です。時に自分の理解を超えた感情がこみ上げてくることがあります。
理解できない可笑しさ楽しさに笑い声を上げながらパドックに意気揚々と引き上げていくおとーさんなのでした。


・・・・・・

結局,初代の全日本S1500クラス最速の座はピヨピヨヴィッツMさんに決定しました。1日目の公開練習からずっとトップを走り続け,最後までトップを駆け抜けた完全勝利です。
おめでとう〜!!!


N4クラスあたりから予報通りの激しい雨となり,最後はテントの中での表彰式となりました。


テントの支柱がとってもジャマですね(笑) #6さんの身長が高いのでちょうど良かったけど...


表彰式でピヨピヨヴィッツのMさんがコメントしてくれた

「私たちS1500でがんばってる人間に,このJAF CUPという大きな舞台で走る機会を与えて下さった主催者各位の方々に深く感謝したいと思います」

「今日のこの場所は全国のS1500ドライバーにとって非常に大きな意味を持つことになると思います」


これらの言葉は,全国のS1500クラスのドライバーの気持を代表してくれてると思います。
本当にありがとうございました。

S1500クラスだからジムカーナを続けられている,そういう人はいっぱいいます。
何とかS1500クラスの灯を絶やさないために,ジムカーナ競技の灯を消さないために,私たちもがんばって行きます。

おとーさんも,S1500クラスが本当の全国区クラスに育つのと一緒に,全国レベルのドライバーに成長したいなと思います。

この分厚い壁を越えて,おとーさんは大人になります。
いつか必ず大人になってみせます。


まあ,ホントはもう45歳なんですがね(笑)


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